傘地蔵あるところに、正直なおじいさんとおばあさんがいました。毎日、炭俵を編んで町に売りに行き、 そのお金でほそぼそ暮らしていました。 ある日、 「もうすぐ、正月だぁ、餅でも買ってくんべー。」 おじいさんは、炭俵を軽4トラックにつんで町へ売りに行きます。 ところが、朝から雪が降っていて、山も畑も真っ白です。 「う~、さぶ~。」 窓から冷気が伝わってきました。 すると、道端にお地蔵さんが仲良く並んで立っていました。 「お地蔵さん、お地蔵さん、今日も通らせてもらいますぅ。」 と、車から降りてお辞儀をしました。ひょいと見ると、 お地蔵さんの頭には雪がいっぱいです。 「お地蔵さんもこれでは、寒がろう―――。」 お地蔵様の雪を払いのけると合掌して、その場を去りました。 おじいさんは町へいって炭俵を売ると、そのお金で竹の編み笠を六つ、 赤い毛糸のちゃんちゃんこを六着、 あったかーい缶コーヒーも六本買いました。 帰り道、お地蔵さんの前に来ると、 「寒がったねー、ささどーぞー。」 といって、編み笠と赤い毛糸のちゃんちゃんこと 缶コーヒーを一つずつあげました。 「おばあさん、今かえってきだー。」 「今日は、営業成績どうだったぁー?」 「いいや、なんも、お地蔵さんがあんまりにもさぶそーだったもんで、 傘と赤い毛糸のちゃんちゃんこと缶コーヒーを買ってきてあげただよー。 わしらは冷蔵庫の中の残りもんでしのげるよー。」 「それはよがったー、お地蔵様がぬくうなればわたしもうれしい。」 そういって、ふたりはさっさと寝てしまいました。 すると、その晩遅くに、家の外でなにやら騒がしい声がします。 「はて?今時分なんだろう?こんな田舎によっぱらいはいねーしなー。」 「ほんとだねー。こんな雪の降る晩に・・・。」 ふたりは、目をさまして、じっと耳をすましました。 なにやら重いものを運ぶ音や、車の音もします。 雨戸から覗いてみても、雪の白さだけで何も見えません。 「やっぱ、わしらの空耳だったんべ?」 そういって、寝床へ戻る途中、今度はギターのチューニングの音や、 マイクのテストの音が聞こえます。 おじいさんは、おもいきって玄関のドアを開けました。 するとどうでしょう! 玄関の前には舞台が出来上がり、昼間のお地蔵様の代わりに 6人のアイドルが、傘をかぶり赤いちゃんちゃんこを着ていました。 おめでとう!と書かれたプラカードを持ってスタッフがやってきました。 「おじいさん、おばあさん、おめでとうございます! おじいさんが100人目の六地蔵傘の提供者でした! お礼に、これから紅白の生中継をここで実況させて頂きます。 副賞として、お米1年分、世界一周旅行もございます!」 おじいさんとおばあさんは感激でいっぱい、 楽しいライブを見て30歳も若返りましたとさ。 |